リニアのことに興味を持って取材を始めたころ、
最初のうちはどこの山岳関係者も興味なしだったので、
山の雑誌で取り上げるのにも若干説明が必要だった。
登山とどう関係あるのか、というわけだ。
それでもコンスタントに記事を出していくと、
もともと自然保護に取り組んできた山岳団体がキャッチしてくれた。
労山や日本山岳会の自然保護委員会などは、機関紙で度々取り上げてくれているし、
日本山岳会の自然保護委員会は、リニアを集会テーマに取り上げていたりしていた。
日本山岳会は歴史もあるし、大きい団体なので、
いろいろ制約もあるようだけれど、集会をすると毎回顔を見せてくれるし、
チラシ配布にも協力していただいた。自然保護委員会の機関紙の
「木の芽草の芽」はリニアの件も積極的に取り上げてくれている。
最新号の120号は群馬支部の北原秀介さんが
「インフラ建設と自然との共生
というタイトルで、トンネル建設と、リニア新幹線の南アルプス迂回ルートの策定に
携わった経験をもとに、今回の南アルプス山岳トンネルの工事を論じているのが
興味深かった。
ネットでも見れるので、読んでみるとおもしろいけど、
トンネル屋にとっても、今回の工事は、
世界水準の日本の土木技術をさらに発展させるものと
期待があるだろう、という指摘だ。
あんまり作る側の目で工事を見ないので、
どういうふうに建設側が工事を捉えているかについてはそこそこ想像することができる。
アセスの基準やその審査の透明化を提言する、その指摘そのものは
当たり前のことだが、一番の問題は、その当たり前のことが
通用するようにするためには、多大なエネルギーが必要であり、
だから、その当たり前のことがちっとも通用してこなかった、
ということだろうと思う。
提言は必要だけど、提言しても耳を貸さない(貸せない)人はいる。
間違っていることを、「それ違うよ」と言ったところで
押し切られるのをどうするか、それが問題なわけです。
平場で作りたい側と作られては困る側と、
意見交換する場が根本的に欠けているし、
そうさせないようにしてきた、それがリニア工事だし、
日本全国津々浦々、公共事業も大規模開発も共通しているかもしれない。
大きな反対の声以外のブレーキが、どこにもないわけだ。