2016年03月04日

多摩とリニア 第一回

多摩とリニア 第一回


 東京新聞の2015年12月17日夕刊には、「水害避難場所×リニア工事残土➡葛飾の公園高台化」という記事が紹介されていた。東京都は海抜0m地帯が多く、大規模水害が生じれば都市機能がマヒすることがかねがね指摘されてきた。東京新聞の記事の構想は、荒川周辺の海抜0m地帯にある新小岩公園に、50mプール220杯分、22万㎥の残土を運び、最大6m公園を高台化するというものだ。その残土にリニア中央新幹線の工事残土を利用するのではないか、というのだ。

これは国土交通省の事業で、「大規模水害で甚大な被害が予想される東京東部の自治体が高台整備を希望すれば、盛り土のために、首都圏の建設工事で発生した残土の処分先を探している業者を国が仲介する仕組み」だそうだ。ちなみに東京新聞は、東京都が東京オリンピックの首都の建設ラッシュで、建設残土の大幅な増加を見込んでいることも報じている。

16.JPG境川の実験線の残土置き場。

 「多摩とリニア」というお題をいただいて、地域の問題としてリニア中央新幹線を位置づけるということを、これまでさぼってきたと痛感した。

ぼくは山に登るので、自分が以前登った南アルプスの自然破壊の観点からこの問題に取り組んできた。南アルプスは3000m級の山々が連なる日本を代表する山脈で、道路やトンネルなど山脈を横断する人工物のない地域だ。そこにトンネルを掘るのに反対するということが、イコール「超電導リニア」という宇宙開発級のプロジェクトへの反対となるのだから、当初は荷が重く感じた。いつもの通り、誰か別の人がやってくれないかなあと思っていた。それでも南アルプス山麓の人たちと知り合いになって、その怒りや不安と接すると、それなりに運動にも本気になってきた。

本当にこの「鉄道」ができた場合、利用する側は専ら都市住民だ。原発の電気を使うのは東京の人で、ツケを負わされるのは専ら福島の人たち、という構造はリニアでも共通している。飯田まで20分で行けるからといって、それに乗って南アルプスを目指すとしたら、いい気持ちはしない。

それに消費者的には、リニアを作る金があるなら、その分東海道新幹線の運賃を安くしてほしい。国鉄の赤字を国民に押し付けて、身ぎれいになってそれで儲けた金があるというなら、地方のローカル線の維持に本来なら回すべきだろう。やってることは逆で、新幹線を伸ばしまくって在来線を寸断し、無人駅を増やしまくり、その上リニアとは、「金持ちの道楽」にしては度が過ぎる。

 とはいえ、リニアができても南アルプスがなくなるわけでもないし、自分の生活にかかわってくるというなら、国立のさくら通りの問題のほうがより直接的だ。目をつぶりさえすれば、リニア中央新幹線の問題は、多摩地域に住むぼくたちの生活と一見無関係だ。

 リニア中央新幹線計画とは、時速505kmの超電導リニアが、東京(品川)―名古屋―大阪を約1時間で結び、総工費は10兆円。事業者であるJR東海が全額負担する。2027年の品川―名古屋間の開業を目指して、すでに一昨年工事認可がなされて、品川・名古屋駅で工事が着工し、昨年末、南アルプストンネルの山梨県側で起工式が行われた。

それでもこの事業は予定通りにはいかないだろうと、大方の人が予想している。断層・活断層の走る南アルプス山岳トンネルの難工事で経費が膨らむと、新国立競技場のように、国費投入が議論になる。何より、全線の84%が地下で、発生する工事残土の行先が今もって不明なのだ。ぼくが昨年10月にJR東海に、決定した残土の行先の割合を聞いたところ、26%という答えが返ってきた。土砂の行き場が決まらないのにトンネルは掘れない。


この近辺では、東京の品川から大田区や世田谷区を通り、多摩川を渡って神奈川県に入る。さらに相模川と道志川を渡って山梨県の実験線につながる。東京都、神奈川県の走行距離は約60kmで、相模川、道志川の鉄橋以外はすべて地下40mの大深度トンネルを通過する。多摩地域では町田市が工事予定地になり、神奈川県相模原市の橋本駅に中間駅が予定されていて、1時間に1本「鈍行」が止まる。

5〜10kmおきに立抗が掘られてそこから残土が排出され、完成すれば非常口になる。発生する残土の量は、東京・神奈川だけで1740万㎥で東京ドーム14杯分。東京新聞によれば、2012年度に都や区市町村などの公共事業で発生した残土の量が300万㎥なので、その量の5、8倍。川崎市では昨年11月の市議会で梶谷貨物ターミナルまで残土が鉄道輸送され、その後海上輸送されることが明らかにされているものの、その先の処分先は明らかになっていない。

それで冒頭の話に戻るわけだ。

もちろん、事業者側にしてみれば、路線の工事現場近くに処分先があればそれに越したことはない。トラック輸送だと周辺住民の不満も高まる。行先の余裕はなく東京東部の海抜0m地帯が取りざたされたというわけだ。

多摩地域に、こういった大量の残土の処分地は現在あるだろうか。なければ東京東部のように、かつて多摩川でも構想があったスーパー堤防が再浮上するのだろうか。長野県大鹿村では、必要性もないのに、工事車両の量を抑えるためにグラウンドのかさ上げが検討されている。現時点ではぼくにはわからない。でも工事が止まらない限り残土が消えてなくなることはけしてない。(『府中萬歩記』23号、宗像充)





posted by リニア新幹線を考える登山者の会 at 21:05| Comment(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。