2016年07月02日

多摩とリニア第6回 残土問題って何だ?

 登山者のグループでは活躍している登山者に呼びかけ人になってもらって、リニアストップの賛同運動を始める用意をしている。そのうち合わせのときに顔を見せてくれた山岳写真家の三宅岳さんは神奈川県相模原市に住む。登山の雑誌の岳人で同じ時期に仕事をしていたので顔見知りだった。

 打ち合わせでは、品川―名古屋間の86%が地下を走るリニア工事で、5680万㎥とも言われる、大量に発生する残土がどうなっていくのかが話題になった。ぼくが昨年10月に聞いた段階では、そのうち行先が決まったのは26%とのことだった。JRは自治体から提案してもらった候補地は排出量を超える容量があると言ってはいたものの、長野県豊岡村のように、周辺住民の反対に遭って撤回された場所もある。東京―神奈川だけでも1740万㎥(東京ドーム14杯分)の残土が発生するというけれど、置き場所には困るから工事はなかなか進まないのではないか、というのが反対派の楽観的見通しだった。

「JRはいったい誰と契約することになるのか確認していますか。その後その残土がどこに行くのか。ぼくが住んでいるところでは、あちこちに残土が捨てられて、とんでもないところに土が積まれたりする。どこの土が運ばれてきているのか把握できない。中にはその中に右翼の街宣車が埋められていたりすることもありますよ」

 と発言したのは三宅さんだった。山口組の抗争がリニア利権を巡ってリニアの沿線で起きているという説がある。実際、最初の抗争は飯田で起き、リニア絡みだったという噂がある。どのような利権構造になっているのか、それを聞いてもよくはわからなかったけれど、残土処理の問題もその一角を占めているのではないかと思う。実際に現地を見て勉強したいと思い、三宅さんに電話した翌日には現在は相模原市になった藤野町を、三宅さんの自家用車で案内してもらった。

 旧藤野町は中央線の高尾駅の二つ先に駅があり、都内に通勤する人もいる。アート系の人が多く移り住んでいて、出迎えてくれた三宅さんに住み心地を聞くと「最高ですよ。一年中遊べますから」と言っていた。三宅さんは地元育ちでお父さんも山岳写真家だ。残土の問題が知りたいと思ったけれど、旧藤野町もリニア工事のまさに現場で、大羽根と牧野という二カ所に坑口ができ、79万㎥の残土が発生するとされている。駅のある相模湖の左岸から橋を渡って、広大な山野が広がる右岸のあちこちの谷に残土置き場が散在し、リニアの坑口予定地もそういった谷の一角に予定されている。

IMG_5980.JPG大羽根の坑口予定地はすでに残土が積まれている

 山々に深く切れ込んだ谷が毛細血管のように入り組んだ地形を形成していて、橋から見下ろすと一見美しい谷間に見える。しかし三宅さんの説明では、残土が流出したりすることもあり、川床が荒れ、魚も住めなくなっている場所もあるという。

 三宅さんが連れていってくれたのは、「百笑の台所」というスペースで、この日は有機野菜の市場が開かれ賑わっていた。三宅さんが入っていくと、「岳さん、珍しい」とあちこちから声をかけられていて、有名人か人気者かと思ったけれど、出てきた後に三宅さんが言うには、「ここは残土置き場を整地してできたところで、経緯を知っているからぼくはあまり足を運ばない。だから珍しいんだよ」ということだった。

IMG_5969.JPG有機野菜の朝市が開かれる場所はかつての残土置き場

 藤野は以前も来たことはあったのだけれど、そういう目で見たことはなかった。今回改めて町を回って、残土の置き場を三宅さんにあちこち教えてもらって、その数の多さや不自然さに驚いてばかりだった。大羽橋のリニアの坑口周辺はすでに残土置き場として谷が埋められていて、さらにここに残土を積むのではないかと予想されている。

残土置き場から煙が発生した場所、残土置き場の下流に水が溜まって、そこに生えている杉木立が枯れている場所、残土置き場が産廃の置き場になっている場所、谷向こうの崖に積まれた残土は崩壊して事件になったという。そして案の定というか、土地の有効活用という意味でソーラーパネルの置き場になっている場所。この置き場は下部で崩壊したことがあると三宅さんが解説していたけれど、「ソーラーパネルの置き場って農薬まくんですよね」とぼくが言うと、三宅さんも驚き顔だった。その側には以前犬猫霊園の看板が出ていたということだ。

IMG_5995.JPGソーラーパネルの除草は農薬に頼ることが多い。エコ?

谷間で暮らしてきた地元の人にとっては、土地を平にして戻してくれるということなら、残土の置き場にすることに抵抗感はあまりないという。
三宅さんは牧野地区の用沢の上流の残土置き場の予定地に案内してくれた。この場所は現在国立競技場の残土が持ち込まれるということで、計画が進んでいる。しかしその前はリニアの残土を持ってくるという話だったというし、さらにその前は神奈川県の廃棄物の処分場になる計画もあったという。

現在では森林の経済的な価値はないに等しいので、そこがお金を産むということであれば、残土の置き場だろうが、採石だろうが、産廃の捨て場だろうが、ゴルフ場だろうが、何でもいいということになりかねない。二束三文の土地が投棄の対象になり、実際、牧野の坑口周辺の土地は地主が不動産屋に売って、住んで畑をしている人はリニアに反対しているのに、不動産屋に地代を払っているという変な現象も生じている。だからといって、その不動産屋がJR東海の指示でそうしているわけではなく、見込み需要をあてにして土地を買い取ったのが実情らしい。(つづく)(「府中萬歩記」28号)
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長野県内残土置き場決まったのは0%、なのに8月着工?

信濃毎日では、
大鹿村のリニア対策委員会で、
長野県工区の南アルプストンネルの工事日程をJR東海が発表しました。
でもこの日、委員の質問に長野県は県内で残土置き場が決まったところは
ないと回答したそうです。
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20160628/KT160627ATI090007000.php

長野工区8月にも着手 南アトンネル工事でJR

 JR東海は27日、下伊那郡大鹿村と静岡県の一部を含むリニア中央新幹線の南アルプストンネル長野工区(約8・4キロ)の建設計画について、最短で8月 終わりごろに工事に着手し、12月初めごろにトンネルの掘削を開始する考えを明らかにした。県内では最初のリニア本体工事で、同社が具体的時期を示すのは 初めて。村役場で同日あった村リニア対策委員会の会合で、スケジュール案を提示した。

 同社のスケジュールでは、用地取得などの手続きを経て、8月中に地元住民向けの工事説明会の開催を目指す。その後、本体工事の施工ヤード(作業場)の整 備を約3カ月実施し、準備を終え次第掘削を始める。本体工事に伴う道路改良工事は、県道赤石岳公園線は説明会を7月終わり〜8月初めに開き、8月初めに工 事着手する計画。県道松川インター大鹿線は8月中に説明会を終え、拡幅、トンネル新設工事ともに8月終わりごろに着手する。

 委員からは、工事で出る残土の処分地が決まらないまま工事計画が進んでいるとしてJR東海を非難する声のほか、県が十分に対応していないと疑問視する声 も複数上がった。同社が同郡豊丘村の残土処分候補地を取り下げたことから、大鹿村内に仮置きする残土がそのまま捨て置かれないか懸念する意見もあった。

 同社はこの日、環境影響評価書の確定後に工事の環境への影響を調べる「事後調査」などの結果を28日に同社ホームページで公開するとした。内容は2014年12月〜16年3月分の村内の水資源調査結果。

(6月28日)

posted by リニア新幹線を考える登山者の会 at 22:02| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする