2016年05月02日

大鹿村道路工事説明会(その2)

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「意に反してやるのはすまない」けど「賛成の意見もある」

 JR東海が度々住民の理解と同意が得られないと事業は進められない、と過去発言してきたことに対する不信も噴出した。
 一つは、口ではそう言いつつも実際には住民の意見は反映していないのは、住民軽視だという指摘。特に今回リニア路線の本体工事と、アクセス道路の整備の工事を切り離してJRが提示してきたことについて、既成事実の積み上げにほかならず住民として同意できないとの発言には、会場から拍手が出た。

住民の間ではアクセス道路の松川インター大鹿線の全線二車線化を求める声が強かったが、JRの工事は狭隘箇所を複数残している。それも全部するわけでもなく、改修工事が終わる前に、本体工事に入るのは容認できないというものだ。

 これに対して沢田部長は、住民の「意に反してやることに対して申し訳ない」と述べ、また上野分室長も住民の意見を汲み取るために分室を作ったので住民軽視ではないと発言している。しかし一方で、「1000人いればそれぞれの思いがある」「期待されている声も聞く」「釜沢でも賛成反対がいる」とも言及した。
反対の意見を持つ人たちは、こういった発言にむしろ反発しただろうことは容易に想像できる。自分たちの事業そのものが意見の対立を生み出しているわけだから、むしろこういった発言は村民間の対立を煽る「ためにする」ものと言われても仕方がない。村民間が対立することで誰が得をするかと言えば、JRなわけだ。

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沢田部長

説明会終了後、JRは記者には、賛成の立場から具体的な提案があったことをもって、「理解が進んだ」ことの根拠としていた。村民を対立させておいて、都合がいい意見だけを取り上げる、と言っているのと同じだ。

長野県の責任

 この日は県の職員も来ていたので、松川インター大鹿線の改修について、狭隘部分の橋の架け替えをしなくては住民生活は守れないのだから、県はJRに押し切られずにきちんと行政指導をしろ、と意見が出ていた。発言した方は、当初は道路改修はJRが全額負担するという話だったのに、県税の投入もいつの間にかなされることになった点にも言及していた。

県は道路管理者として押し切られていない、と言ってはいた。押しきられていないというよりはむしろ、住民の要望よりもJRの意向を優先したという説明のほうが合っているかもしれない。

「理解と同意がないとできない」なんて言ってない?

 では事務所を置いたJRは現場でどのような理解を求める取り組みをしているのだろうか。この日、リニア本坑の主要な工事現場となる釜沢の住民の一人が発言した。3月にJRと釜沢住民との個別の懇談会が開催され、その席でJRの大鹿事務所詰めの永田氏が「理解と同意」ということについて、JRとしては言っていないと言ったというのだ。
住民の同意がなければ工事は進められないとJRは言ってきたのに、個別の地区懇談会では別の説明をする。「どう信じていいのか、不安の闇の中に突き落とされる」感覚だったとみんなの前でしゃべっていた。

 その点について、JRの沢田部長は、JR側の発言についていっさい釈明することはなく、結局、理解と同意については事業者側が責任をもって判断する、と述べるだけだった。JRが責任を持つのは地元の住民に対してではないと言っているのと同じだ。不安を解消するよりはもっと不安にしている。

 この点について、終了後の囲み取材でJRの沢田部長に直接、そのような発言があったのかどうかについて確かめたところ、担当に聞かないとわからないとのことだった。住民との信頼関係上、こういった発言の有無を確かめるのは重要ではないか、と重ねて聞くと「ご意見として承っておく」とのことだった。そのようなウソの説明が仮に住民に対してなされたところで、問題ないというのがJRの公式見解ということになる。発言した釜沢住民に聞くと、記録があるとのことだった。

一方、発言が問題にされた永田氏は、囲み取材のやり取りを脇で聞いていた。

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終了後に住民と話す永田さん

理解は進んだか

 囲み取材では冒頭JRの沢田部長は「住民の理解は進んだ」と発言。住民からも計画の内容を踏まえての発言を出ていたことに言及して成果を強調した。
よっぽどそうは思えなかったのか、記者の一人から、「理解というのはunderstandという意味ですよね」と問い返す発言もあった。たしかにJRの計画は理解したけれど、だから同意できるかどうかは別次元だ。沢田部長は「共感という意味でも理解が進んだ」と強調した。

 反対意見はなくならない、しかし総合判断で工事を始めるということはつまり「反対があっても最後は押し切るということでいいですよね」と囲みで、筆者は念を押した。沢田部長は「押し切る」という言葉使いはどうかと思うが、過去の公共事業の事例を挙げ、事業者側が最終判断するという立場は崩さなかった。

その点について「JRとしては今回の事業は公共事業という認識ですか」と改めて聞くと、「公共〈的〉事業です」と言い直していた。この辺に、JRの本音とお上意識の根拠が垣間見える。総合判断については記者の質問に「基準はない」と述べていたが、「公共的事業」なら説明責任は当然あるだろう。

 なお、住民の何人かにその後JRが「理解は進んだと言っているが」と水を向けると、「そんなわけない」「JRのガス抜きに利用された」と言っていた。JRが「理解が進んだ」と言えば、住民の理解が進むのだろうか。やっぱりUnderstandできない。

(宗像 充)



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大鹿村道路工事説明会(その1)

質問の数

 2016年4月27日、大鹿村大河原でJR東海ほか事業者による、松川インター大鹿線の改良工事の説明会が開催された。JRの発表では参加者130人。1000人余の村にしては依然高率の参加である。事業者側はJRほか、中部電力、鹿島JV、それに長野県も参加し、主催者側だけで30人は超えている。

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 先日4月20日のリニア対策委員会のJRの報道への説明では、これまで3問とされてきた質問数の限定は設けないということだったのの、結局冒頭に司会は質問数を3問に制約。JR側の報道への説明では、この点について「連絡不足」とのことだった。

貼り出し掲示と「庁舎管理権」

 一方、発言については「大鹿村とその関係者」と対象を絞っていた。会場前ではこれまで同様、有志がリニア反対のチラシ配りや即席の路上パネル展を開催していた。

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JR東海側は今回、会場の大河原交流センターの入り口のガラス扉に、「大鹿村とその関係者」に参加者を限定する貼り紙、それに会場内での来場者の行動を制約するための但し書きを箇条書きにして貼り出した。

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後者は裁判所や官庁等で掲げられているような内容とほぼ同様だったが、会場を借りた主催者が、このようなこまごまとした貼り出しをする事例は、筆者は見たことがない。

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開場前に玄関先に出てきたJRの永田課長はこの掲示について「庁舎管理権がある」と強弁していた。会場を借りた一使用者が、会場の使用権だけでなく、庁舎管理権まで丸ごと譲り受けるということは通常考えられないので(ほかにいろんな店舗が入るビルの会議室の一使用者が1階玄関にこんな貼り紙を出すのはありえないので)、単にこの発言は勘違いだと思う。ただ、こういう貼り紙を出させる村の姿勢はJR同様、あまり住民を信用していないというのはわかる。

ちなみに沢田部長は、今回が貼り出しが初めてではないとのことだったので、過去の説明会の写真を見てみたところ、たしかに入口の自動扉の中扉に掲示物が見えた(中央部、字は不鮮明で不明)。

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今回の貼り紙は「もはや遠慮はいらない」ということだろう。一方で、「大鹿村関係者限定」という説明は今回初めてだった。JRの意図を善意で解釈すれば村の人によく説明したいということなのだろう。でもだったら、ありもしない「庁舎管理権」を盾に発言をけん制するのは余計だろうなとは思う。

既成事実とJRへの期待

 JRの説明は、先日20日の大鹿村リニア対策委員会でなされた説明に、そこでの委員から出た質問や意見を反映して肉付けしたものだ。
松川インター大鹿線の改良、釜沢に通じる赤石岳公園線の改良、村中心部の国道152号線を回避する代替ルートの路線等の工事用車輛の通過に伴う道路新設・改良、発生土の仮置き場とそれに伴う車両数の減少、水資源などの環境影響対策、村内への工事関係者の宿泊施設の建設と、それに伴う村内産物の利用、変電所計画、スケジュール、送電計画がその内容だ。これでだいたい1時間超。

 次に19人の住民が質問に立った。以前の説明会では全員の発言者が計画への不信や懸念、反対を表明していた回もあったが、今回は3人が肯定的な観点からの提案をした。一人は道路改良に伴い、松川インター大鹿線内でのラジオや携帯電話の電波状況を改善してほしいというもの、また現在の小渋線の状況を改善するためにセンターラインを引き、トンネルの証明を明るくしたらどうかというもの、それに200人の工事関係者が村に滞在するので、地域の産品を使うように具体的に示してほしいというものだった。

 こういった提案はラジオや携帯の要望のように、そもそもがJRの管轄ではなかったり、道路管理者の県も説明していたように、できるなら最初から実現していたものだったり、あるいは工事で村に金を落とさせるためにするもので、発言者も村のガソリンスタンドの経営者や商工関係者だった。もう来るものなんだから、現実を受け入れるべきだ、という言い方はまだみんなの前ではしにくいので、こういう言い方をして存在をアピールするのかもしれない。しかし、提案自体はむしろ「無理難題」と受け取られているように思えた。

対策委員会をお墨付きを与える場にしたい村の人

 この日最後に質問したリニア対策委員会の前島さんは、国の認可を受けているといっても、やるのはJR。JRは対策委員会で説明するだけ、対策委員会はJRにお墨付きを与える場ではないのだから、理解と同意に対策委員会を巻き込むのはやめてほしい、と発言した。

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この発言にフロアからは「それは他の対策委員会も同じ意見か」と声も上がった。対策委員会内で環境対策をまじめに議論することをおもしろくないと思っている村の人がいることを示す一幕だった。JRはこういったやり取りに「オッ」と喜んだだろう。前島さんは、「対策委員会はリニア計画に対する住民の環境と生活への対策を協議する場、それは設置趣旨に明記されている。それを引用させていただいた」と言い返していた。反論はない。

架空送電線にしたい根拠

 それで、残りの人の発言は、新しい移住者の単純な質問から、計画が具体化したことによって生じた新たな懸念や不安、それに白紙撤回やJRの姿勢そのものを問うもの、それに同意はしていないと釘をさすものと、リニアに疑問や否定的な立場から発言するものだった。

 村でのJRの姿勢を示すものとしていくつかの意見を紹介したい。
 一つは住民の中で意見が強かった送電線の地中化要望に対して、新たに中部電力が示してきた地中化工事は予定地の地盤が脆弱なため、地滑り発生の恐れがある、ということを根拠に、リニアのトンネル工事の白紙撤回を求めたもの。

考えてもみれば、鉄塔だろうが電線地中化トンネルだろうが、地滑りの危険があることには変わらない。こういう反論が出るここと自体が、もっぱら経費面からの架空送電線の選択が住民の理解を得にくいことから、結局新たな理由付けを無理やり持ち出してきた、という証拠のように思える。全体としてもともと無理がある計画なのだ。

posted by リニア新幹線を考える登山者の会 at 11:02| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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