2016年04月13日

多摩とリニア第3回 相模原に駅ができる! あなたは乗りますか(その2)

田園調布の下をリニアが走る
 3月最後の週末26日、大田区の田園調布周辺でリニア新幹線に反対する住民グループの、沿線フィールドワークに参加した。品川駅を出たリニア中央新幹線は大田区に入り、世田谷、川崎の地下を抜けて町田市を通過して、相模原市の橋本駅に至る。川も何本も通るし、もちろんこの間は人口の密集地帯で、相模川の橋梁に至るまで一瞬たりとも地上に出ることはない。地権者も膨大なはずだ。でも地権者の権利が問題にならないのは、「大深度法」という2000年にできた地下の有効活用を目的にした法律のおかげだ。この法律は地下40m以深においては、公共的使用の目的であれば地権者の許可を得ずに開発をすることができる、というものだ。
 東急池上線の長原駅から20人ほどで出発し、中原街道を経て田園調布の閑静な住宅街を抜けて田園調布駅まで至る、1時間ちょっとのミニツアーだった。地上は商店街や住宅、マンションなどもある。地下なので問題ない、ということのようだ。途中にある警視庁の家族マンションが立坑のために取り壊される以外は、住民生活に直接の影響はなく、説明会も実施されたわけではない。本当に影響はないのだろうか。
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 途中、勝海舟がこよなく愛した洗足池を通る。この池は現在も湧水池であり、流れ込む水路はない。リニアトンネルが地下水脈を切れば、この池に影響は出ないのだろうか。また、リニア路線は途中、私立田園調布学園の真下を通る。この学校の教員はそれに憤慨したのか、入試の穴埋め問題で、リニア新幹線について問うたという。
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大深度地下法ができる前は、地権者の権利は当然地下にも及ぶとされ、だから都心の地下鉄は道路の下を通って、曲がりくねった経路をとっている。本当に40m以深なら地上への影響がないのだろうか。実際には実例が少ないので何とも言えないはずなのだけれど、わからないからやらない、とはならずに、わからないから影響が出てから考える、ということのようだ。

都会にできる鉱山
 午後の質疑応答では、この件について追っている数少ないライター仲間の樫田秀樹さんが講演をした。懸念があっても、地下にトンネルができることのイメージがなかなか湧かないと、会場からは質問があった。ぼくも発言した。鉱山が一つできるとイメージしたらどうだろうか。
これは実際に南アルプス山岳トンネルの本坑の工事現場となる、大鹿村釜沢集落の住民が言っていたことだ。地上からはトンネルの中は見えない。でも坑口付近は工事車両や作業員がひっきりなしに出入りし、坑口からはズリ(排出土)が次々に排出される。ズリには空気に触れると化学変化を起こして鉱害をもたらすものもある。
ぼくの出身地は大分だけど、登山でよく行く祖母傾山系にはいくつも鉱山があり、宮崎県側にはヒ素鉱毒で有名な土呂久鉱山などもある。大分県側には、上畑と尾平に二つの鉱山があり、尾平のほうは1954年と、実に60年以上前に操業を停止している。ところがそれぞれ現在も複数の職員が交替で職員を常駐させている。それで何をしているかと言えば、鉱山跡から現在も排出される水に石灰をまぜ、鉱毒を中和させているのだ。特に上畑のほうの鉱山は、現在は県がその事業を担っている。
「いつまで続けるんでしょうか」と職員に聞いたことがある。「毒が出なくなるまでず〜っと」という答えに、気の遠くなる思いをした。民間企業の尻拭いを税金で行なうことの一例で、原発処理の今後を垣間見るような風景だけれど、こういったことは日本各地で行われてきたのではないだろうか。どのくらいの人がそのことを知って、原発の問題やリニアの問題を考えているだろう。
ちなみに、この日樫田さんに聞くと、新しくリニアのことが書けなくなった週刊誌が一つ増えたと言っていた。JR東海の「ご説明」作戦に根を上げたのだ。近くの人は起きていることは知っている。でもそうやってそれ以外の人への情報は隠匿されていく。

駅の前の農業高校
 リニアの路線は40m以深の地下を通るものの、5〜10kmごとに30m幅の立坑が換気のために設けられており、非常の際はここからエレベーターにより地上に脱出する。もちろん工事の際はここから土砂が排出される。立坑ができるということは、そこに鉱山ができるということだ。中でも影響が大きいのが、中間駅のできる橋本駅前の相原高校だ。工事になれば、ここは土留めにより開削され、ここからシールドマシンが左右に発進していく。完成後の神奈川県駅は地下となる。もちろん、駅ができるわけだから、相原高校は郊外の職業能力開発総合大学校跡地への2019年の移転がすでに決まっている。学校の敷地を駅に設定すること自体、常軌を逸している。もちろん、地元には根強い反対運動があり、先日も署名が回ってきた。
 というのは、現在も700名の生徒が勉強しているのに、あろうことか、リニア工事を急ぐあまり、高校の敷地内に作業抗(20m☓30m)と仮説の迂回道路を設置するために、用地を借り受けたいとJR東海は言ってきたのだ。その用地は、農業関係の学科もあるこの高校の環境緑地科の生徒が、樹木や測量について学ぶ実習林だ。
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校内に移植できるのは20本程度で、多くの樹木が切り倒されてしまう。生徒たちはリニアが来るので耐震化が必要な校舎を新しくしてもらえず、今もプレハブ校舎で勉強しているのに、さらに追い打ちをかけるようなこういった申し出が、教育や環境など一顧だにしないJR東海の企業体質をよく示している。(つづく)
posted by リニア新幹線を考える登山者の会 at 21:39| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする