4月19日に大鹿村のリニア対策委員会が開催された。
毎回村の委員とJRが対面して話すのだが、今回は19人が参考人として来ていた。
JR東海が3人、県が3人、ほか、中電に鹿島JV、これだけ揃えばそれなりのことを
説明しそうなのだけれど、委員からの懸念や不安の声に対して、「大丈夫」と言う場面が
何回も繰り返される、というのは人数が増えてもちっとも変わっていない。
JRのために説明会の打ち合わせをしたい村
ところでこの日、委員の前島さんが、
村の対策委員会の通知についておかしいのではないか、と冒頭意見していた。
JRは今回の委員会後に4月27日に
松川インター大鹿線(松川から大鹿に至る小渋川沿いの道)の改良のための
工事説明会を村民対象に予定している。この説明会後に道路工事に入るという。
村の委員への通知では、この27日の説明会でJRが話すことについて話す、という内容が入っていた。
対策委員会はJRの説明にお墨付きを与える場ではないので、こういう表現は避けてほしい、という。
どうも通知を出す事務局の村は、JRのやることに対し、
仲間意識が強いのか、別団体、という区別が明確につけられて
いないのではないかという疑念を委員が抱いてこういう発言になった。
村としては痛いところを突かれたと思ったかもしれないが、
意味がわかっていなかったかもしれない。でも会議は進む。
「理解と同意」の意味
ちなみにJRは意味がわかっていて、
委員に意見をもらいながら、それを説明会で反映する、ということのようだ。
JRがいつやるか決めるのに、「理解と同意」を求める?
日本語に翻訳すると「出方を見る」になる。
前島さんのPCにはこんなステッカーが貼ってある。
対策委員会で開けるとJR側が見るしかけになっている。
JR東海の澤田部長は、前島さんが質問に過剰反応しているのか、
何度も二人で言い合いのようになっている場面にこの日は出会った。
委員が質問しているわけだから、最後まで聞けばいいのに、と思うけど
待てないようだ。
前島さんは、この日、
「ご理解ください、と何度も言われるけど、
理解するのはこっちのほうだから変な日本語を使うのはやめてほしい」
と釘を刺していた。そりゃそうだ。
ちなみに委員長の森上さんは、前島さんが発言した時だけ
「発言は簡潔に」と口を挟み、JRには何十分もしゃべらせている。
工事スケジュール
この日、JR東海は、各工事のスケジュールを公表した。
松川インター大鹿線
トンネルは6か7月に契約、その後説明会、秋から着手、
四徳渡りトンネルは2018年末までに完成
拡幅は2016年夏から工事
赤石岳公園線(大河原から釜沢への狭い道路) 今年初夏から拡幅工事
152号線の迂回ルート(村の中心部を避けるための小渋川の対岸のルート)
2016年に協議、2017年に工事
青木川沿いの道 2017年から工事
南アルプストンネル 現在、河川・砂防・森林の許認可官庁と協議中、一部終了
今年夏から着手
青木の坑口トンネル 2018年着手
残土仮置き場 トンネル工事と同時に使用開始
小渋川を渡る橋梁 2018年〜
村長がJRに質問!
この日はこのスケジュールを見て村長も不安に思ったのか発言した。
松川インター大鹿線の改良工事の完成を待たずに、
南アルプストンネルの工事が始まれば、
実際には、松川インター大鹿線の改良工事がされるからリニアの工事は我慢しよう、
と村民に対して言ってきた村長の立場がなくなる、ということのようだ。
村長としては道がよくなってから、トンネル本体工事が始まると考えていたのに、
これでは、トンネルは掘られる、道はよくならない、ということにもなるのではないか、
と心配になったのだ。そのくらい予想しててもよさそうだとはちょっと思う。
JR東海は、工事はいろんな段階があるからできるところから順次進めるもの、
松川インター大鹿線の工事は絶対にやるから大丈夫、と言っていた。
村民感情を無視しさえすれば、
別にJRの説明がそれほどおかしいともぼくも思わないけど、
(実際にJRが信頼できるということとはまったく別です)
それで村長が村民を説得できるのだろうか、と考えると、
「(仲間なんだから)オレの立場も考えろよ」
と言いたくなる村長の立場は理解できるけど、だったら反対しろよ、
と思うのであんまり同情しない。
本当に渋滞は起きないのか?
平瀬委員は、松川インター大鹿線の途中にある橋は拡幅せず、
橋を渡る手前にトンネルを掘って、そこに誘導員を設置して、
渋滞が起きない、というJRの説明に、何度もそれで大丈夫か、
と疑問を言っていた。
JRの説明は、シミュレーションをしているから大丈夫、という以上のことは
言わないわけだけど、シミュレーションしていさえすれば大丈夫なら、
原発も事故らないし、御巣鷹山にジャンボジェットも落ちないし、
九州新幹線も脱線しないよなあ、と冷静に考えてその疑問は普通だ。
違うデータを入れれば、まったく違う結果になるのがコンピューターの計算なわけだから。
この点は他の委員からも質問が何度も出て、
住民の感覚 VS JRの大丈夫だ論
という図式もずっと変わらない。これは感情の問題が背後にあるので、
そういう問題だとJRが学ばない限り、ずっとこれからも続いていくだろう。
「物理的に止まります」
ところで、釜沢に至る道の改良カ所は何カ所かあり、
その改良の最中に南アルプストンネルの工事に入るというので、
終了後にJRに直接、どういう工事から入るのか聞いてみた。
工事は除山の非常口から掘りはじめることになる。
最初はヤードの建設、それから掘削機を運び込んで掘削が始まる。
JRの社員は、腕がついててそれでウィーンって穿つんです、と身振りで示していた。
これは分解できるそうで、トレーラーで運び込むことになる。
このトレーラーを運び込むのに道路の拡幅が必要になるわけだ。
この日、JRは村内の残土置き場の容量を53万㎥と発表し
釜沢の置き場4カ所は23万㎥と発表した。
村内から発生する残土は300万㎥と言われている。
現在はまだ、53万㎥の置き場は確定ではないが、
仮に確定したとして、全部の置き場が決まっていなくても
仮置き場に置く分から掘りはじめるのかと聞くと、そうだと言った。
それでは、村外で、村内から発生する残土の置き場が
決まったところはあるのか、と聞くと、ないという。
掘り始めても、置き場が決まっていなければどうなるのか、と聞くと、
「物理的に止まる」という説明だった。
だったらこの53万㎥の置き場が決まらなくても工事はできない。
で澤田部長は
「夏の着工は準備はできる。あとはどこまでいいよと言ってもらえるかだ」
と言っていた。
この日、委員の前島さんは、環境省が認可にあたって出したコメント、
残土置き場については、環境に留意し、登山道の周辺等は避けるように、
という指導を繰り返していた。
釜沢の残土置き場はもちろん登山のために湯折れに至る林道の周辺にあり、
釜沢の集落の下の三正坊も含めて、環境への影響は大きい。
「大丈夫だ」という説明ではちょっと弱いよな、と思った。
観光客3割減
ちなみに、村の宿泊客を対象にしたアンケートでは、
工事が始まると約3割が来村を控える、というデータがある。
前島さんは、これ以上の観光へのダメージを避けるために、
村内への工事関係者の飯場の設置に反対した。
実際、すでに村の観光協会への訪問者は減っているという。
JRはそれで宿泊客が減っても補償は考えてない、
とのことだったので、この点について確認すると、
実際に工事で宿泊客が減ったという因果関係があれば
回答しないといけない、ただ現時点では予想はできない、
という答えだった。
「工事関係者が使うかもしれませんし」
ということも漏らしていたけれど
自然を大事にする人を受け入れたい宿にとっては、
その一言は感情を逆なでするだけで余計だろうな、と思った。