2016年03月08日

多摩とリニア第2回 相模原に駅ができる! あなたは乗りますか(その1)

リニアが報道されない理由

 2027年開業のリニア中央新幹線。10兆円の巨大開発ながら、夢は語られてもその弊害についてはなかなかメディアで取り上げられない。だから「今どきそんなもの」と思う人はいても、具体的な反対運動はなかなか目に見えない。リニアは新幹線の3倍以上の電力を消費する。柏崎刈羽や福島の原発から送られる電気は、大菩薩を超えて100万ボルトの巨大送電線網で、リニア実験線に隣接する東山梨変電所へと送られる。物理的にも原発とリニアと直結しているのだけれど、何かと原発とリニアは共通点が多い。「原子力の平和利用」の夢ばかりが語られてきたのは、東京と大阪を一時間で結ぶ「夢のリニア」が語られているのとよく似ているのだけれど、これにはもちろんカラクリがある。

 一時、NHKの会長は建設主体のJR東海の副会長経験者だった。その人事の背景にいた、JR東海の名誉会長で名古屋財界のトップの葛西敬之は、安倍首相とお正月にゴルフまでする仲良しでと、大手メディアがビビる理由はある。雑誌や新聞がキヨスクに置いてもらえなくなればたいへんだ。それ以外にもフリーランスの記者が、雑誌にリニアに批判的な記事を書くと、JR東海の広報部が4〜5人で編集部に押しかけて圧力をかける。実はぼくもこの被害に遭った。

山と渓谷社の雑誌で記事を作った際、リニアについての質問を箇条書きにしてJR東海の広報部に送った。その間にJR東海の広報部からは、企画書を出せとか、逆に写真を提供しようかとか、余計なことも言われた。それだけでなく、記事ができると、2回の記事に対して、それぞれ10数カ所、5カ所のクレームが入り、案の定、広報の社員が資料とともに編集部に「ご説明」に上がった。

1回目のときはぼくにも数値の誤りがあったものの、2回目には事実関係に特に誤りはなく、見解の相違によるいちゃもんだった。たとえば、中間駅を「実質無人駅」と書くと「施設管理の人はいるので無人駅ではない」という具合だ。このやり取りは、こちらからデータを出せ、計算式を出せと言うまで何回も続く。山と渓谷社の編集者の方が、それなりにどっしりと構えてくれていてくれたし、ぼくもそういう可能性はあると事前に言っていたのでまだよかった。JR東海に取材拒否に遭ったり、雑誌から切られたりしたフリーランスもいる。上部からの圧力で出版が取りやめになった事例もある。

先行した誘致運動

話が多摩とちょっとそれたけれど、ジャーナリストへの口封じとともに、誘致活動がずっと以前から沿線自治体を中心になされてきたのが、住民が声を上げにくい背景にある。すでに1979年には、沿線各県で「中央新幹線建設促進期成同盟会」が発足していて、御用学者によるシンポを繰り返しながら、現在は「リニア中央新幹線建設促進期成同盟会」に改称して誘致を継続している。各県にも期成同盟会がある。だいたい沿線自治体は、静岡県以外は都府県も市町村もみんな入っているので、工事による住民生活への影響が大きいとアセスの過程で判明しても、すでに首長のレベルでは足抜けができない体制ができあがっていた。

放射性廃棄物の処理の問題では、西日本の自治体の議員に現ナマをばらまき、住民をオルグして六ケ所の再処理工場の視察旅行に招待するという、露骨な住民懐柔策が採られた。大月にあるリニア実験線を望む、山梨県立リニア見学センターを見に行くと、平日にもかかわらず観光バスと団体客で大賑わいだった。これはおそらく、期成同盟会に所属する市町村➡自治会を通じて、リニア見学ツアーが組織的に組まれてくるからで、実際、知り合いの中には回覧板でその案内を受け取った人もいた。これだけ夢がばらまかれると、「夢から覚める」のも難しいし、覚めたところでなかなか起き上がれない。

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駅前の農業高校

 相模原市の京王線のターミナルで終点、JRの相模線のターミナルで八王子線の駅に橋本駅がある。品川駅から大田区や世田谷区を地下で通過したリニアは、中原区の等々力緑地から川崎市内に入り、中原区、高津区、宮前区、多摩区、麻生区の順で、川崎市内20kmを横断し、南多摩の町田市を経て橋本駅に至る。そこから先の相模川の上流は、津久井湖や相模湖の広がる風光明媚な場所で、相模川を横断する以外は同志山塊をやはりトンネルで通過して山梨の実験線へと至る。

 広い意味での多摩地域の地下をリニアが通過し、その沿線発展の一里塚がこの橋本駅ということになる。とはいっても駅も地下で、中間駅に止まる「鈍行」は一時間に一本しか、JR東海は今のところ予定していない。リニアは早くないと意味がないので、中間駅を設けるなら自治体負担をJR東海は望んでいた。ところがそれでは自治体が反発し、結局中間駅はJR東海が、駐車場やアクセス交通機関などの周辺整備は自治体が担うことになった。だから中間駅は実質無人駅で待合室もない。そもそもチケットは事前購入でグリーン車・普通車の区別のない全席指定で、遠隔操作のため運転手もいない。時速500km、1000人乗りの水平式ロケットに乗せられるようなものだ。

そしてぼくたち「多摩」の駅は、橋本駅の南側、現在相原高校という、もともと農業高校だった総合高校の敷地が予定されている。(つづく)
(『府中萬歩記』24号、宗像充)
 

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posted by リニア新幹線を考える登山者の会 at 13:53| Comment(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

釣りと環境

3月20日に渓流9条の会が開催します。

大鹿村の前島久美さんもリニアの現地報告をするようです。

チラシは以下から。

posted by リニア新幹線を考える登山者の会 at 13:41| Comment(0) | イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする